麻布大学 獣医学部 獣医学科卒業。東京都内の動物病院で臨床医として勤務。
その後、獣医師として栄養学をより深く学ぶことで、犬猫の健康を臨床医時代とは違う視点からもサポートできるのではと考え現在に至る。毎日欠かさず動物関係のSNSをみることで日々癒されている。
2025/06/23
犬は体の構造上、人よりも吐きやすいと言われていますが、特に初めて犬を飼った人は犬が突然吐いたら心配になってしまいますよね。
犬が吐いていると言っても原因は様々です。消化不良や早食いなど、日々の食事スタイルを工夫すればおさまるものもあれば、急性アレルギーや誤食など命に関わる疾患が原因のケースもあります。
この記事では吐き出したものから考えられる原因や、どんな時に動物病院へ行った方が良いかの判断などについて解説します。
犬が吐いてしまった時、まずは落ち着いて吐いたものや色を確認しましょう。動物病院へ連れていくのに、内容が伝えにくいと感じた時は写真に残しておいても良いでしょう。
換毛期などで毛が抜けやすい時期には抜けた毛を飲み込んで毛玉が出てくる時があります。毛玉と言えなくてもお腹の中でフード絡みついて塊になって出てくることもあります。毛は消化されないため便として出てくるか、吐き出すしかありません。
猫と比べて犬では少ないですが、毛玉が腸管内で詰まってしまうと、命に関わることもあります。
予防策として、ブラッシングをまめにすることで体内に入ってしまう毛の量をなるべく少なくしましょう。
また、犬の毛が体内に溜まってしまうこともありますが、人の抜け毛も同じく消化されないため、犬の生活圏はこまめに掃除しましょう。
消化されていないフードを吐いた場合は、早食いや食べ過ぎが原因の可能性が高いです。
この場合、食事のすぐ後に吐き出されます。
ただし、フードが胃に入る前の食道から吐き出されている場合、食道に疾患がある可能性がありますので、頻繁に起こるのであれば動物病院で診てもらってください。
早食いが原因の場合は、凸凹したお皿を使ったり、フードを詰められるコング、知育おもちゃなどを活用したりして早食い防止策を試してみましょう。
透明の液体は水や胃液、唾液などですが、特に病気ではなくてもこれらを吐く場合があります。
お散歩中などに水を勢いよく飲むと、胃が刺激されてすぐ吐いてしまうことがあります。
胃液を吐いている場合は、空腹が原因であることが多いです。寝る前に少しだけフードをあげてみたり、食事の時間を調整したりして空腹の時間を減らしてあげてください。
緊張や興奮で吐いてしまうこともありますし、乗り物酔いで吐くこともあります。
事前に長時間の車移動などがあることがわかっている場合は、かかりつけ動物病院と相談して吐き気止めを飲ませてから移動しても良いでしょう。
黄色い液体は胆汁の混ざったものが胃から出てきたものです。
犬は空腹だと、胆汁が胃に逆流してきて胃が刺激されてこの黄色い液体が出てきます。
空腹になる早朝や食事前によくみられます。空腹時に胃酸が過剰に分泌される状況が続くと胃の粘膜が弱り、胃潰瘍に発展してしまう場合もありますので、注意が必要です。
空腹の時間をなるべく減らしてあげることで防ぐことができるので、食事の回数や頻度、時間などを見直してみてください。
しかし、肝臓に疾患がある場合などでも同様の症状が見られることがあります。食事を見直しても症状が続くようであれば動物病院へ相談しましょう。
茶色いドロドロしたものが出てきた場合は消化されたフードが出てきていると考えられます。
吐いたのが一度だけでそれ以外に体調に異常がない場合は一過性の可能性があります。元気も食欲もあり、その後吐く様子がないのであれば様子を見てみても良いでしょう。
他にも消化不良が原因の可能性があります。この場合は、胃腸の働きが低下してしまっていたり、フードが体に合っていなかったりすることが考えられます。
一度お腹に優しいフードを検討してみても良いでしょう。
しかしサラサラとした液体状のものが出てきた場合は、胃潰瘍など胃腸の疾患による出血の可能性もあります。
出血から嘔吐まで時間が経過している場合は、赤い血液が酸化し胃液と混じることで茶色や黒色になります。重大な病気になっている可能性もありますので、吐くこと以外に体調面で少しでも気になることがあれば、動物病院へ行くことをおすすめします。その時に吐いたものも一緒に持って行ってください。
口の中の怪我、重度の胃潰瘍や食道炎などで出血がある場合、鮮血を吐くことがあります。
他にも肺や気管支など、呼吸器の疾患がある可能性もありますので、吐いたものも一緒に持って動物病院へ行きましょう。
フード以外のもの、おもちゃの破片やひもなど、消化管に詰まってしまうものを食べてしまって吐いている場合もあります。この場合、命に関わる危険性があるため動物病院へ行きましょう。
全てを吐ききっているのならば良いですが、何個も異物を食べていることもあり、まだ異物が消化管内に残っている可能性もあります。
吐き出したもの、サイズや質感を確認するためにも食べてしまったものと同じものがあればそれも一緒に動物病院で見せてください。
犬が吐いていて、以下のような場合は動物病院で見てもらった方が良いでしょう。
一度だけでなく、繰り返し吐いてしまっている時は、何らかの疾患の可能性が高いです。
胃腸炎や誤食などの消化器疾患だけでなく、腎不全やホルモン系の疾患、腫瘍や感染症、中毒症状など、様々な原因が考えられます。
繰り返し吐くことで脱水など他の症状も進んでいきますので、早めに動物病院へ連れて行ってください。
特に大型犬では胃の中に大量のガスが溜まってしまうのに胃が捩れてしまって吐き出すことが出来ない、胃拡張・胃捻転症候群が起こることがあります。
食後数時間で発症することが多く、お腹が膨らんでいたり、苦しそうといった症状が見られます。
この場合緊急度が高いためすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
犬ではワクチン接種が代表的な例としてよく挙げられますが、外部からの原因物質に免疫が過剰に反応してしまう急性アレルギーによるアナフィラキシーショックが見られることがあります。こちらが起こった場合は消化器症状(嘔吐・下痢)以外にも虚脱、顔面腫脹や呼吸困難などが併発することが多く、接種後30分~1時間に起こることがほとんどです。命に関わり、早期治療が必要になるため、上記の症状が見られたら、迷わず早急に動物病院を受診するようにしてください。
では上記のような治療が必要な疾患ではなく、ただの消化不良や、体質に合わないフードが原因で吐いている時はどんなフードに変更したら良いのでしょうか?
胃腸が弱い犬には、消化をサポートしてあげられるような成分が入っているフードがおすすめです。
適度な食物繊維やプロバイオティクス・プレバイオティクスなどが含まれていると腸内環境も整いやすいでしょう。
また、人工保存料や香料、着色料などの添加物は胃腸の負担になる場合もあるため、これらが入っていないフードが理想的です。
犬が吐いてしまう原因は消化不良や早食いなど、日々の食事スタイルを工夫すればおさまるものから、誤食など命に関わる疾患まで様々です。
吐く以外に何か気になる症状があるのであれば早めに動物病院を受診しましょう。
特に病気が原因でないのであれば、日々の食事から見直してみてください。
腸内環境を整えることは体全体の健康にも直結しますので、それぞれの犬に合った消化の良いフードを探してみてください。